赤いな、と思った。

 

 

 

 

「神様、知ってますか?」

白い岩肌、見渡しても白、白、昼の空。そんな神の座に生える、赤。

真っ赤な彼に話し掛ける。

 

なんだ唐突に」

不機嫌そうに、だけどちゃんと返してくれる

そんな実は優しい神様は、下界を見下ろしていた姿勢のまま振り向いた

 

 

「幸せの、色です。」

 

にこり。つい微笑んでしまった口元で答えれば、答えになってないと眉間の皺を深くする彼

 

 

「幸せに色なんぞあるのか?」

「あるんですよ」

 

全てを統べる彼でも知らない話ができるなんて、ちょっと嬉しくて、つい身を乗り出してしまう

 

あるとしてそれがどうしたというのだ」

 

 

くるりと体を向けた彼はその大きな歩幅で近づいてきてくれる

 

 

「赤は、幸せの色なんですよ」

「は?」

 

赤は幸せの色。

そう断言した私の目には

訝しそうな彼の顔がうつる

 

 

「だから、2人の色を足して赤にできればいいですね!!

2人で力を合わせれば、きっと乗り越えられないことはないから

 

そう思ったけど

 

……貴様はつくづく阿呆なようだな」

 

呆れたような声に「え」と聞き返せば

 

 

「赤は三原色だ。作れはせんだろう」

 

凛。射ぬくような眼差しに

現実を気付かされる

 

そうか、赤は作れないのか

 

 

魂が抜けたように白を見つめる私に、彼は言う

 

 

 

「ゆえに

幸せは、作るものではなく、見つけるものなのだ」

 

 

我はそう思う。そう優しく続けた彼は穏やかな目で私を包んでくれた

 

 

赤いな、と思った。

彼の肩の向こうに見た空は、紅く染まっていた。

 

 

「そして我は神なのでな」そういたずらな声で意味ありげな事を言った彼に、ふと気付いたことをこぼした。

 

 

私は、もう見つけたみたいです」

 

 

幸せの色

穏やかに微笑む2人の、そんな時間

 

 

(なんていったって、赤ですからね)

 

 

 

――――――――――――――

赤は目立つからきっと見つけやすいよ!

 

 

 22.10