「好きです、神さま」

――――その響きに、酔った。

 

 

 

「愛してるんです」

 

あぁ何と甘美な言葉なのだろうか。

これ程までに我の脳を揺らした美しい言葉が世にあっただろうか?

 

目の前の愛しい少女が震えながら発した言葉にそんな快感を覚える。

しかしそれと同時に深い絶望を識る。

 

 

「ヒカリ、我は神だ」

そなたは、人間なのだ――…

 

 

その言葉は、先刻まで赤かった愛らしい顔を歪ませるにはあまりに容易く、残酷過ぎた。

少女は俯き、再び震え出した。先程までのそれと違うものだという事くらい、我にもわかる。

 

「わか……てます、っ」

 

少女からは嗚咽が漏れる。

 

あぁ、わからなければ良かった

こんな感情しらなければ良かった―…

 

「だけどせめてっ、あなたの一瞬を下さいませんかっ、」

 

無意識にのびる自分の手が憎かった。

 

「泣くな。」

 

無茶な事を言う口が憎かった。

しっかりと抱きしめてしまっている腕が憎かった。

 

「我もヒカリが好きだ。」

 

いつの間にか、本音しか言えなくなっていた自分が憎かった

 

 

愛している

そう紡ぐと少女はこぼれるように笑った。

 

 

あぁ彼女には笑っていてほしいのに

 

 

 

愚神

‐100に静かに蓋をする

 

 

 

我は神だった

それ以上に少女が好きだった

 

 


23.02