きらきらきら。

それは、人を惹き付けてやまない光

 

 

「わあぁ〜キレイですねー!

「ふふふっ、そうですねぇ」

 

 

きらきらきら。

黒のキャンバスに無数にちらばる満天の星

 

そしてゆらゆらとそれを映す湖面

 

夜だというのに、こんなにも明るいものか

 

 

「なんだか星がいっぱいあるみたいです!

 

ここだけ星の数が2倍だと

隣ではしゃぐ彼女に、思わずもれる笑み

 

 

何の為にこんな夜中に湖に来たかと言えば、夜釣りをする為だが、彼女とこの景色を見てみたいと思っていたのも事実。

 

 

想像通りといえばそれを過ぎるくらい楽しそうな顔に、心の中で小さくガッツポーズ

 

 

「島の太陽」と呼ばれる彼女の笑顔は、男女問わず人を惹き付ける。独り占めしたいと思うのは、きっと男性の性。

 

 

緩んだ頬を隠すように、釣竿の用意をした

 

 

そんなに嬉しいですか?」

ぽちゃん。釣糸を光の中に垂らしてからも、きゃいきゃいと顔を輝かせていた

 

 

「はい!とっても!

 

 

にぱり。子供みたいな満面の笑みを浮かべた彼女に、

まぁ、いいかと思わされる。

 

 

こちらを向いてにこにこするその姿に、

本当に連れてきてよかったと

心も緩んだ。

 

 

 

 

 

そして暫く経った頃、不意に湖面を眺めている彼女が私を呼んだ

 

 

タオさん、」

 

はい?と顔を向けると、ゆらゆら揺れる光を見つめる横顔

 

「?なんでしょう、ヒカリさん」

 

 

首を傾げて尋ねれば、くるん。宙に踊った無花果色。

 

 

「星、取ってください!

 

 

ぽかん。

ついていかなかった思考は数秒停止。

きらきらきら。

光を蓄えた瞳は、まだ私を捉えて離さない。

 

 

え、えぇ?星ですか

 

「星です!きっと今ならとれる気がするんです」

 

 

まっすぐに私を見る少女に、動揺

 

でも、だけれども、

 

 

 

確かにこれならなんだかとれそうですねぇ

 

 

いつもはちかちか

遠いけれど

モールス信号のようなあれとは随分違う今日の星。

 

 

 

ぐっ。不意に手に重み。

しなる竿に、つい上がる口角。

 

 

 

ふふっ、いつか釣ってさしあげますよ。」

「えっ!?ホントですか!?」

 

 

 

顔を綻ばせた彼女に、プレゼントを。

 

 

 

 

 

 

 

きらきらきら。

それは人を惹き付けてやまない光

 

いつかきっと釣ってみせましょう。

 

周りを魅了し続ける、ひかりを―…

 

 

 

星を釣る青年

その青年の笑顔も、きらきら輝いていた

 

 

 

 

 

湖のぬしを釣りました。

次は島の太陽ですかね。




22.10