どうしてもぎこちなくなってしまう

それは、親に内緒でプレゼントを用意している子供のような

初めて嘘をつくようなぎこちなさ

 

 

 

 

 

 

 

「あったかいですね〜」

そう、だね

 

 

広大な草原を優しく照らす陽にあたるヒカリは、ぽやっとした顔で笑った

 

 

こちらに向けた笑顔をまた太陽に戻した彼女につられて、俺も太陽を見上げた

 

 

あぁ、眩しいな。

そもそもこんな陽が姿を見せる時間に外に出るなんて

もう何百年ぶりだろう

 

 

優しく身を溶かすような太陽に、あぁホントに俺も変わったなぁなんて。

 

 

「そうだっ、魔法使いさん!四つ葉のクローバー探しませんか?」

 

ぱっ。視界の端に映り続けた無花果色が跳ねるように揺れて、苺色の瞳が俺の瞳を吸い込んだ。

 

クローバーうん

「やったぁ!競争ですよっ」

 

ただ頷いただけなのに、

ぱぁっと花を咲かせてはしゃぐ。

 

不思議な子だなぁ、とつくづく思った。

 

 

 

「う〜ん、ないですね〜」

そう、だね……

 

 

下を向き始めて数分

なかなか見つからない。

だんだん見間違いも増えてきた

 

 

あぁ、いくら彼女と当たる柔らかな陽だといっても太陽は太陽だ。

 

少しくらくらとしてきた思考と、歪み始めた視界

その、端っこに

 

 

……あっ、た…………

 

黄緑に沈んだ、四枚の葉っぱ。

 

「えぇえええ!?ホントですか!?」

 

手にとれば、少し離れていた彼女も顔を上げて驚く

 

うんあった、よ

 

ひらり。小さな風に揺れて、手の中で愛らしく首を傾げるクローバー。

その会釈と見つめあっていると

かけてくる、彼女

 

 

「あぁあ本当ですねっ」

 

がくーん。本当に残念そうに膝に手を置く彼女に、

それを差し出す。

 

あげ、る」

「えっ?!

 

驚いてあげられた顔に、欲しそうだったしと首を傾げれば、

 

少し暗い顔。

思っていたのと違う反応に少し戸惑いながら「どうした?」と聞けば

 

 

「私が、先に見つけたかったんです

 

拗ねたように彼女は言った

クローバー1つでそんなに表情を変えられるなんて

 

 

「クローバーは幸せの象徴ですよ?」

うん?」

 

ちょっと繋がらない話に疑問符が止まらない。

なら何故受け取らないのだろう

彼女はクローバーに、どんな世界を見ているのだろう

 

 

「私が、魔法使いさんにあげたかったんです

 

 

ぼんやり目の前の彼女を情景のように眺めていた俺は、予想外な言葉に思わず聞き返す

 

……、え?」

 

「私があげたかったんです…!だって、だって

 

 

 

顔を真っ赤に俯いた彼女に

続きを促すようにのぞきこめば

 

 

 

「いつも、私がもらってばっかりいるから

 

 

 

あぁ、あぁ。

意味を理解するまでかかった数秒は、穏やかな陽に流された。

思わず緩む頬と、心音(こころね)の鍵

 

 

 

俺は、幸せだね」

 

そんなこと言ってもらえるなんて、と誤魔化しを入れて。

 

 

もう幸せならとっくにもらってる。

それだけじゃなくて、こんな気持ちも、俺は君に貰ってるんだ。

 

 

 

 

 

どうしてもぎこちなくなってしまう

それは、親に内緒でプレゼントを用意している子供のような

初めて嘘をつくようなぎこちなさ

 

 

うん、やっぱり俺は幸せだよ」

 

 

 

君に、伝えたいけれどどうしても上手く言えない事があるんだ

 

 

 

 

 

じゅ、てむ

それは、初めての呪文

 

 

 

 

愛してる、の幸せのじゅもん

 

 22.11