想いを宝石に出来るなら、君に渡したいモノがある。
「…誕…生日、おめ…でとう…ヒカリ…」
ゆらゆらゆらケーキに立つろうそくだけの灯りで、正面に座る愛しい恋人に笑いかける。
「えへへへへっ…ありがとうございます」
照れたように笑いながら頭を掻く彼女は、きらきらきら。
外の暗闇を照らしだす星達より綺麗で。
「…え、と……これ…プレゼント…。誕生日…。」
す、と緊張しながら差し出した細長い青い包み紙
「えぇっ、すいませんありがとうございます!!!!」
慌てながら受け取る彼女に、開けてみてと促す。
かさりかさりと包みを開ける、綺麗に荒れた手を眺めながら、緊張。
大切な人に、いやそれ以前に誰かにプレゼントなんてあげたことがないから
相当悩んだ。
大丈夫…かな…気に入ってくれるかな…
どきどきどき。思わずちょっと身を硬くしたまま眺めていた箱は、青を剥がされ、白をあらわにしていた。
「わあぁっ…綺麗…!」
箱を開けた彼女は、きらりと顔を輝かせた。
「…安、物…だけど…」
苦笑しながら言うと、彼女は「とんでもないです!」とぶんぶん首をふった。
「ネックレス…ですか…」
ほぅ、と見惚れるように小さく溜め息をつき、手にとってかざす。
きらきらゆらゆら。
小さな宝石が反射したろうそくの火が、彼女の瞳に揺れていた。
「…うん…わからなくて…何がいいか…」
誰かに聞こうにも聞ける相手もおらず、とりあえず宿屋の前でいつもギターを弾いているあの考古学者に聞いてみたら、「宝石がいいね」と言われた。
それなら彼女に渡したい、ぴったりのモノがあると、このネックレスにしてみた。
「うふふ、ありがとうございます…嬉しいです」
「…よかっ、た……」
喜んで貰えたみたいで、ほっとした。
「これは、何ていう宝石なんですか?」
「………ムーンストーン…って、いう…」
どうしても、君に、渡したかった宝石。
「へえぇそうなんですか!なんだか神秘的ですね〜…」
月を…月の光をそのまま閉じ込めたみたいです、と宝石を眺め続ける彼女に、思わず小さく笑いがこぼれる。
「……その…石言葉…、教えてあげる…」
「え?」
そんなのあるんですかと言った彼女へ身を乗り出して、
耳元へ囁けば。
ろうそくの火より真っ赤になる彼女にこんにちは
想いを宝石に出来るなら、君に渡したいモノがある。
その石言葉に想いを乗せて、
君の心に輝いていて。
ムーンストーン
‐永遠の、愛を君に‐
(…ヒカリ…、)
(な…なんですかっ(真赤))
(…ありがとう…生まれてきてくれて)
22.10