春。喜びの歌が満ち溢れる季節
ひらひらふわふわと丸みを持った陽射しが降る草原を歩けば
揺れる春草や春色に染まる木々が愛を歌う
「なんて柔らかい、」
包み込むように舞い降りる陽に手をかざせば、鼓動を感じるような、そんな日だった
絹かベールのようでいて、全くこの世の物でないような陽の柱を見て、しかし確かにこの世の物である幸せと不思議を感じていれば
聞き慣れた穏やかな声が音楽に混じった。
「ヒカリ…、」
「魔法使いさん」
振り向けば、ここへ呼んだ本人が立っていた。
「春はやっぱり優しいですね」
にこり、頬笑めば彼も同じように笑った。
柔らかな陽のせいか、案外陽に当たる彼も違和感がないなと思った。
「…降ってるのか…昇ってるのか…わからない、ね…」
眩しそうに空を見上げる彼に、あぁ陽射しの事かなと気付く。
降り注ぐ陽を眺めていれば確かに、あれは降っているのか昇っているのかとわからなくなる
恋人である彼が、陽射しの話をする事や、子を愛する歌を歌う鶯の声を聞けること、そしてこの空気を一緒に感じられることがじんわり嬉しくなった。
そうですね、と返して 浮かぶ疑問を口にする
「お話って、なんですか?」
ざあぁと吹き抜ける風も穏やかに、温かく2人の間を抜け、冬の色はすっかり姿を消していた。
「…渡したい…物があって」
がさり、後ろに回されていた腕が揺れ、フィルムのような音を立てながら姿を見せたのは
「―…花束…ですか!?」
「うん……まぁ、」
ぎこちなく差し出された花束を手にとれば、その大きさを腕に感じた。
「綺麗……すごい…!」
息を呑むような紫に言葉がうまく出ず、少し戸惑えば、彼が控えめに笑う
「…こういうの…よく、わからない…けど…、伝えたい、ことが…あったから…」
笑いながら頭をかく彼に「ありがとうございます」と全く足らない言葉で気持ちを表した。
伝えたいこととは何だろうかと花を眺めれば浮かぶもの
「チューリップの花の花言葉は―…」
言い掛けて、紫色のチューリップの中、きらりと光るものを見つけた。
埋もれたそれを取り出してみれば
「っ…指輪…!?」
きらりと光るそれを陽にかざせば、確かに指輪。
裏面に彫ってある文字を読もうとすると
「チューリップの花言葉は『永遠に君を愛す』…」
凛と澄んだ声が意識を彼に戻させた。
彼が発した言葉と、今手に持つそれの意味に追い付けないまま
理解しようと頭をフルに回転して絡まる私と、静かに頬笑む彼と
目が合った
「…愛してる、ヒカリ…結婚しよう」
混乱した頭に響いた音は、先に心臓を叩きに行ったから
理解するまで時間がかかった。
木々が幸せを歌い、鶯が愛を歌う春、
「――っ……はい…っ!」
柔らかな祝福を受けるのは、誰?
幸せに溶けた春
‐たいようの祝福‐
(…ヒカリ…泣かないで…)
(うぅうぅうすいません…ぐすっ)