かなり初期に書いたものなのでホントに稚拙な文です
それでも構わぬという海のように広いお心を持った方のみどうぞ!








 「アニスさ〜ん」

 

傾き始めた陽が木々を赤く染める頃

片付けを始めた、アリンバ農場の農園で明るく響き渡った声に呼ばれるまま振り向けば手を振りながらこちらに駆けてくる人がいた

あれは…

 

「ユウキさん…」

 

思いがけない人物に思わず笑みがこぼれる

 

「アニスさ〜ん今日も美しいですね!花に例えるならまるで百合のようです!」

「ふふ…相変わらずお上手ですね」

 

驚いた…街で偶然会った時に口説かれる事ならあったけれど

わざわざ農場まで来るなんて…

でもそんな事も嬉しくなってしまうのは彼に恋してしまったから

 

「そんなアニスさんにこの白ゆりの花を捧げますっ」

「まぁ素敵っ…」

 

でも知ってるんですよ、そんな風に愛を囁くのは私にだけじゃないことを

 

「はは…;かっこつかないな綺麗に咲いたのが一輪しかなかったから」

 

だけど そんな風にバツが悪そうに笑うところも 無邪気に笑うところも…

 

私だけ本気なんて、ずるいじゃありませんか

 

…だから少し今日は反撃してみましょう…

 

「でも…」

「?」

 

「花一輪で私が落とせるなんて とんだ勘違いですわ」

 

言った途端恥ずかしくなって背中を向ける

そして彼が一生懸命育てたのであろうそれに顔を埋める(といっても一輪だけど)

 

あぁ…この花も、私だけの為に育ててくれたのではないのでしょうね…そう考えると泣きたくなった

 

「ははっ敵わないなぁ…」

 

苦笑まじりの声が聞こえて我に返った。小さなため息にふりむくと

切なそうに笑う彼がいた

 

あぁ…っ  思わず百合を握る両手に力を込める

どうしてそんな表情(カオ)をするのですか…?

それじゃあ まるで―…

「それなら、」

「っえ?」

 

「次は両手に抱えきれないくらいの花束にして 口説きに来ますよ!!」

 

私の下らない懐疑を遮った言葉と 逆光に映える子供みたいな笑顔に

あぁ…敵いませんわね…

と思った…

 

 

私の為に花を育てて

(そういえば彼が他の()に白ゆりをあげたなんて聞いたことがない)


22.05