カラリンカラリンと、除夜の鐘にしては軽すぎる音で107の鐘の音が鳴り響き、
「ゼロ!!明けましておめでとうございまーす!」
テレビのカウントダウンが0を告げ、年が明けた事を報じた。
そして108回目の鐘の音が響いた。
「イェエェーイ!!明けましておめでとー!!」
異様にテンションが高いユウキはクラッカーを鳴らしながら 今年も頑張ろうな!と言った。
クラッカーは違うんじゃ…と思いながらも、ヒカリは
「うんっ、今年もよろしくね!」と笑った。
兄妹2人で年明けを祝っていると、コンコンコン…と、控え目に戸を叩く音がした。
ヒカリとユウキは顔を見合せ、音がしたと思われる玄関を向いた。
「…あの…、どなたですかぁ〜…?」
むきかけのミカンを両手で握ったままヒカリが恐る恐る尋ねると
「…ヒカ…、リ…いい…?…ちょっと…、」
と あまり大きくない、青年の声が聞こえた。
「!!魔法使い!!?」
ユウキはクラッカーを片していたホウキを両手で持って、構えの態勢についた。
「もーお兄ちゃん…!今、行きますぅ〜!! いってくるねぇっ」
声の主は、兄の言った通りだとヒカリも思ったので、身を乗り出して答え、ミカンを置きながら小さく兄に告げて玄関へ向かった。
ドアノブを回せば、カチャリと音がして、立て付けの悪いそれを体でぐっと押してドアを開けた。
ひやりとした空気が一瞬で身を包み、思わず目をつぶって身を縮こませた。
「……ヒカリ…」
ふわり、柔らかくなった声色に目を上げれば、優しく、嬉しそうに笑う、
「魔法使いさん!」
愛しい恋人。思った通りの人物が、そこに立っていた。
ヒカリは顔を明るくさせて、ドアから体を離した。
「どうしたんですかっ??」
まだ松の内ではない…。
きっと急用に違いないのだが…、
「…うん…あの…えー…」
言いづらそうに頭をかいて、俯いてしまった。
どうしたんだろう…。恋人とはいえあの魔法使いが家を訪ねてくるくらいだから
とっても大事な話なんだろうと、真剣に次を待った。
「…どうした…って、いう…か…、」
相変わらず顔を伏せたままでいるため、彼の表情はよめない。
だけど口調が、いつもより更にゆっくり…というよりは、しどろもどろしたかんじだ。
「…ただ、」
「ただ?」
思わず聞き返した言葉の次に待っていたのは
「…1年の、最初に会うのは…ヒカリがいいなと、思って、」
おずと上げられた視線は、まっすぐ私の心を射ぬいて。
寒さに怠けていた心臓が、叩き起こされた。
真っ赤な彼に負けないくらい真っ赤になった私は
もうたまらなく彼が愛しくなって
思わず温もりに飛び付いた。
「私が最初に触ったのは、魔法使いさんですねっ!!」
a happy special day
‐何でもかんでも特別になる日‐
(…来年は…、一緒に…すごそう…年明け…。)
(!?それって…!?)
、家族として。