手招きしてと叫んでる。  201204

もういいかい、かくれんぼ
彼女と私でかくれんぼ

きっとこれはかくれんぼ

探しているけど見付からない
彼女の姿見付からない

もういいかい、
もういいよ、

もう、いいよ、

その言葉を待っているのに聞こえてこない
彼女は、もういいよすら言ってくれない

かくれんぼ、かくれんぼ
きっとこれはかくれんぼ

いつまでたっても終わらない

もういいかい、
まあだだよ、
もういいかい、

もう6年も経っているのに

もういいかい、
もういいかい、

返事がない見付からない

もういいかい、かくれんぼ
終わりにしないかかくれんぼ

きっと彼女を隠したのは私なのにもういいかい、
まあだだよ、
もういいかい、

いつまで探せばいいんだろう
いつまで待てばいいんだろう

頑張ってねと笑った彼女のあの顔が、最後に見た顔だっただろうか。

もういいかい、かくれんぼ
許してくれないかかくれんぼ。




差し伸べた手が強いとは限らないの  201203

あなたを救けようと伸ばした腕は、
ぽきんと折れた。

まるで、あなたに届きたいと伸びていった細い枝のようね。

―――――――――――
木って、太陽に届こうと外へ外へ上へ上へ、伸びれば伸びるほど
近ければ近いほど細く脆く折れやすいなんて、
なんだか残酷よね。



嫌ね、一緒に死にましょうって話よ  201202

夾竹桃の枝で焚き火をしませんか?

 

僕に死ねと仰ってるんですか。



オレアンドリンの彼女  201202

ねぇ、この粉を浴槽に入れてきてくださらない?
やだ、ただの入浴剤ですよ。ふふ。

私が青酸ソーダになれるなら、あなたの気道まで侵すのに
勿体ないわ




たとえば、
  201202

貴方の薬指を私に下さい

あぁほら、そこに紐があります。




君がいない
  201202

泡の残ったシンク



人はそこから生まれたという。  201411


水の中はどこまでも自由だけれど

とてもとても苦しいだろう。




障子を開けた鶴  201404


「鳥は美しいですね、羽も、姿も、色も、声も。そして何より空を飛べる。羨ましい限りです。」

「君はなにもわかっていないね、君は鳥の呼吸を聞いたことがあるかい」

「いいえ。」

「そうだろう。鳥も生きているんだ。そこをわからなければダメだ。姿形ばかり、そして美しいところばかりに目を向けて本質を探ろうとしない。それでいて人間は嫉妬ばかりする。ひどいことだと思わないか。」

「そうですね。」

ああ、愚かしい、愚かしい。
なんと愚かしい方なのでしょう。
その傷一つ付いていない綺麗なびい玉のような目玉には、どんな世界がうつっているのでしょう。
そしてきっとその若く背の低い空には、朝と昼と夜しか訪れていないのでしょう。
なにより夜には眠りにつき、いつでも光は当たると心から信じきっているのでしょう。
なんと美しい方なのでしょう。
ああどうか、この脆弱な思想ある方が、美しくいられますように。



まだ冷たい柵の後ろから見下ろしている。  201404



舞姫は空を飛びました。
舞姫は言いました。
いつもいつも言いました。
舞姫は空を飛びました。
見たこともない笑顔で飛びました。
私に向けていた笑顔はきっと無理をしていたのだろうと
ようやく気がつきました。

舞姫は言いました。
「私は、風になる。」
だから、あなたは花になってね、と。
あなたなら大丈夫、と。

舞姫が長い髪を私の精一杯伸ばした手をかすめながら冷たく無機質なコンクリートを蹴りました。
とてもとても力強く、そして美しく。

「ごめんなさい」

ごめんなさいと私は言いました。

風は言いました。

「ほらね、そうやって傷つける。」

ごめんなさいが優しいとは限らない。

風はそう言って私の瞳に塵を運びました。

舞姫は嘘をつきました。
舞姫は空になり、鳥になり、風になり、大地にも花にもなりました。
舞姫は嘘をつきました。
私は花になっていません。

一体どちらが幽霊だったのか

これは、支えをなくしたそんな意気地無しな女の子の物語。



ばいばいばいばい、そんな言葉しか書いてなかった
  201201

あたしに手紙を送るくらいなら
部屋をきれいに片づけるくらいなら
靴をきれいにそろえるくらいなら

もっと生きてなさいよね